「ホームレス×広告」 心に響く4つの広告

最近「広告×コミュニケーション」の言葉を良く耳にする。
それは消費者の生活行動の多様化やモノがありふれた結果などによって、広告の在り方が戦略的になり、そして広告がより人々の生活に入り込むようになったということだ。私はそういった考え方を利用して、戦略的に消費者の生活に情報を発信し、行動のキッカケをつくりたいと思っている。

今回は、ホームレスに対する広告キャンペーンについて調べてみた。実際それは様々な国で行われている。興味深かったものをいくつか挙げてみよう。

BEING HOMELESS


http://www.dailymotion.com/video/xcxzy9_being-homeless_webcam

これは2010年カンヌ広告祭のソーシャル広告銀賞を取った広告キャンペーンである。

写真にあるようにホームレスの人たちに小型カメラを内蔵したメガネをかけて生活してもらい、その生活のありさまをWEB上で見れるようにした。多くの人がホームレスとの接点を全く持たず、その理解も進まないなかにあって、この企画だけでも十分有意義に思われるが、面白いのはここからだ。動画を見終わってウィンドウを閉じようとすると、「申し訳ないのですが、ストリートから抜け出すのは簡単ではありません」という警告文が表示される。このWEBサイトから出るにはホームレス支援団体のロゴをクリックするしかない。そこから団体のホームページに飛ばされ、ホームレス支援の活動をしていること、寄付を集めていることなどが伝えられる。興味本位でサイトに来た人を寄付に誘導していく広告キャンペーンなのだ。多少強引な手法ではあるが、「ホームレスの境遇はひとえに個人の努力不足に帰結させられるようなものではない」というメッセージを強く感じられる、面白い広告だ。

TAKE AWAY DERELICT

同じくカンヌ受賞のソーシャル広告。


往来の多い通りの壁にたくさんの紙が貼られている。紙の絵柄は一枚一枚異なり、全体でそこに一人のホームレスの絵が描かれる。実はこの紙は裏面がホームレス自立支援団体への寄付申し込み用紙になっており、人々は自由に取って行って構わない。団体への共感者が一人また一人と増えていくにつれ、紙が一枚一枚消えていく。そしてとうとう街からホームレスが消える(救われる)。メッセージがビジュアル的にわかりやすい。

“心とクローゼットを開けてください”

次はブラジルのNGOにおけるキャンペーン。

不必要な服は寒さに凍えるホームレス達に寄付しようと投げかけている。映像認識技術によって、用意された服をポリバケツに入れると、映像の中の男性がそれを着る。このキャンペーンは、一過性にはすぎないが、彼らにとって寒さは生命に関わる重要な問題であるということを認知させる、素晴らしい取り組みだと思った。映像に見入る通行人たちの姿が印象的だ。

顔を背ける前に

最後はロサンゼルスで実施されたゲリラ広告だ。

非常にシンプルな企画で、観光地によくある書き割りを実際のホームレスを撮影して作り、路上に設置した。

都会で生活しているならそこかしこで目にするホームレス。しかし彼らの姿は確かに視界の隅には入っているものの、なかなか人々の意識には登らない。事が難しいだけに、無意識の領域に抑圧してしまっているのかもしれない。
"BEFORE YOU TURN AWAY, PUT YOURSELF IN MY PLACE."(顔を背ける前に、私の立場になってみてください)
それは「風景」と化されてしまったホームレスが投げかける強烈なメッセージだ。


このように世界各国で様々な取り組みは行われている。どれも一過性のものではあるのだが、キャンペーンが行われることで人々はホームレス問題に目を向け、考えさせられる。日本でも同様に、ホームレスの存在に蓋をすることなく、このような広告キャンペーンを積極的に行っていくべきだ。

[twitter:@NonbayHunter2]